写真を撮るうえで明るさを意識するのは極めて重要です。露出を上手に調整すれば、失敗写真を減らし、より自在に撮ることができるようになります。
目次
デジタルカメラの露出とは
レンズを通ってきた光は、撮影する際には直進してイメージセンサーまで到達します。この時にイメージセンサーは光にさらされた状態になるわけですが、これを露出と呼びます。
つまり露出は出来上がる写真の明るさを左右する要素でもあります。
露出に影響を与える3つの要素
露出を変動させる要素は3つあります。
- 絞り
- シャッタースピード
- ISO感度
この3つのパラメーターのどれかを調整する事で露出を決めるわけですが、どのパラメーターを操作するかで出来上がる写真に違いが生じます。ですので、撮影者は自分が意図する写真を撮るために、適切なパラメーターを調整して適正露出にする必要があります。
ちなみに適正露出というのは、明確な数値などで表せるものではなく、撮影者の主観によって決定するものです。
露出調整の具体例
暗い室内で窓があり背景は明るい状況、という想定で子供を撮影する場合を例に説明します。写真を撮るには明暗差があり難しい状況です。
子供は暗くなって表情も見えない、窓の外は明るすぎて真っ白、みたいな写真になりがちな状況ですね。
マイナス補正
全体の露出を暗めにして、背景である窓外の風景も確認できるような明るさに調整し、子供をシルエットのように写したい場合です。
この時はマイナス補正と言って、要は写真全体の露出を暗めに設定するわけです。1段分暗くするとしたら、先に説明した3つのパラメーターのいずれかを1段分露出を暗くする方に変更します。どのように変更するかは後程具体例で説明します。
プラス補正
マイナス補正とは逆に、全体の露出を明るめにして、背景の窓外は真っ白になっても良いので、子供の表情もある程度見えやすいように明るくしたい場合です。
この時はプラス補正で、写真全体の露出を明るく設定します。こちらも1段分明るくしようと思ったら、3つのパラメーターのどれかを1段分露出を明るくするように調整します。
絞り、シャッタースピード、ISO感度のいずれかで露出調整する方法
ある時の補正なしの露出で、3つのパラメーターが次のような値だったとします。
- 絞り:5.6
- シャッタースピード:1/125
- ISO感度:800
マイナス補正する場合の例
この状況から1段分暗くする、つまり露出をマイナス補正した場合のパラメーターの組み合わせは3パターンあります。
パラメーター (初期値) | パターン① 絞りで調整 | パターン② シャッタースピードで調整 | パターン③ ISO 感度で調整 |
---|---|---|---|
絞り (5.6) | 8 | 5.6 | 5.6 |
シャッタースピード (1/125) | 1/125 | 1/250 | 1/125 |
ISO感度 (800) | 800 | 800 | 400 |
これらパターン①~③は、すべて同じ露出なので、写真の明るさは同じに見えます。しかし写真には違いがあります。
①絞りで調整した場合と②シャッタースピードで調整した場合の比較
ピントの合う範囲(被写界深度)が異なる
①絞りで調整した方が、ピントが広範囲に合います。つまり②シャッタースピードで調整した方が、背景のボケる量が多いです。
ブレの量が異なる
②シャッタースピードで調整した方が早いシャッターがきれますので、まずは被写体ブレが発生しにくいです。被写体の動きで写真に躍動感を出したい場合は①絞りで調整した方が良いでしょう。また、手ブレに関しても、②シャッタースピードで調整した方が早いシャッターがきれますので、当然ブレにくいです。
①絞りで調整した場合と③ISO感度で調整した場合の比較
ピントの範囲(被写界深度)が異なる
先ほどの①と②の比較と同様です。①絞りで調整した場合は被写界深度が広く、より広範囲にピントが合った状態となります。③ISO感度で調整した場合は、より狭い被写界深度でボケ量が多いです。
画質が異なる
③ISO感度で調整した方が、①絞りで調整した場合と比べてノイズが少なく高精細な画質が得られます。できるだけ高画質を優先したい場合はこちらを選択した方が良いでしょう。
②シャッタースピードで調整した場合と③ISO感度で調整した場合の比較
ブレの量が異なる
先ほどの①と③の比較と同様です。手ブレ及び被写体ブレへの対応方法で判断すれば良いでしょう。出来るだけブレを防ぎたい場合は②シャッタースピードで調整、を選択するべきですね。
画質が異なる
①と③の比較と同様ですね。画質優先かどうかで判断する事になります。ISO感度については、自分の主観とカメラの性能によって、許容範囲を確立しておいた方が良いです。
今回のような場合でも、許容範囲内なら、あえて③は選択しないなどいろんな場面での判断を素早く行うことが出来ます。写真は一瞬が勝負の場合も良くありますので、シャッターチャンスを逃さない事につながります。
どういう基準で選択するか
今回の例のような状況で、具体的に調整パラメーターを選択する際にどういう基準で判断するかを、それぞれの調整方法で説明します。
- 広範囲にピントを合わせたい
- シャッタースピードを早める必要がない
- 高画質を優先的に求めない
- 背景のボケは維持したい
- ブレやすい状況等の理由でシャッタースピードは早くしたい
- 高画質を優先的に求めない
- 背景のボケは維持したい
- シャッタースピードを早める必要がない
- できるだけ高画質で撮りたい
状況や目的に応じて調整パラメーターが変わりますので、適宜判断が必要です。
プラス補正する場合の例
マイナス補正した場合とは逆に、1段分明るくする、つまり露出をプラス補正した場合のパラメーターの組み合わせも3パターンあります。
パラメーター (初期値) | パターン① 絞りで調整 | パターン② シャッタースピードで調整 | パターン③ ISO 感度で調整 |
---|---|---|---|
絞り (5.6) | 4 | 5.6 | 5.6 |
シャッタースピード (1/125) | 1/125 | 1/60 | 1/125 |
ISO感度 (800) | 800 | 800 | 1600 |
これらパターン①~③は、マイナス補正した場合と同様、すべて同じ露出で写真の明るさは同じです。しかし写真には違いが発生していますね。
先程のマイナス補正の場合と同じように比較してみましょう。基本的にマイナス補正と同じなので、詳細説明は割愛し結果だけ簡単に記載します。
①絞りで調整した場合と②シャッタースピードで調整した場合の比較
- ピントの範囲⇒①の方が②よりもピントが合う範囲が狭いです
- ブレの量⇒①の方が②よりもブレにくいです
①絞りで調整した場合と③ISO感度で調整した場合の比較
- ピントの範囲⇒①の方が③よりもピントが合う範囲が狭いです
- 画質⇒①の方が③よりもノイズが少なく高画質です
②シャッタースピードで調整した場合と③ISO感度で調整した場合の比較
- ブレの量⇒③の方が②よりもブレにくいです
- 画質⇒②の方が③よりもノイズが少なく高画質です
どういう基準で選択するか
マイナス補正時の説明と同様に判断基準を説明していきます。
- 背景をできるだけボカしたい
- シャッタースピードは維持したい
- できるだけ高画質で撮りたい
- 広範囲にピントを合わせたい
- ブレを気にする必要性は少ない
- できるだけ高画質で撮りたい
- 広範囲にピントを合わせたい
- シャッタースピードは維持したい
- 高画質を優先的に求めない
マイナス補正時と同様ですね。状況に合わせた判断が必要です。
実際の露出は半自動モードを使うのが基本
上記で、露出をコントロールするには、3つのパラメーターを状況によって判断して調整する必要がある事がわかりますが、それって結構大変ですよね。
露出を補正し、目的に応じた露出を得るには半自動のモードを使用するのが一般的です。
絞り優先モード
絞りを任意に撮影者であるあなたが調整すると、設定した露出になるようにシャッタースピードを自動で調整してくれます。露出補正をしつつ、絞りは自分で選択したい場合にはこのモードで対応すると良いでしょう。
ISO感度については、都度自分で設定しても良いのですが、ある程度の基準で自動で可変させることも出来ます。
私は主にこのモードで撮ることが多いのですが、ISO感度はオートにしています。ISOオートの設定は以下のようにしている場合が多いです。
- 自分の許容範囲の上限以下の範囲指定
- シャッタースピードの下限指定(1/125くらい)
シャッタースピード優先モード
主にブレをコントロールしたい場合に有効ですね。子供写真の撮影ではブレが非常に問題になる事が多いので、シャッタースピードを常に意識しながら撮るのも一つですね。
ブレとシャッタースピードは密接に関係するので、ブレにくくする事ももちろん大事ですが、ブレを表現に使うことで躍動感ある写真が撮れたりもします。色々試してみると良いですね。
ISO感度はオートが便利
ISO感度は、最近の技術の進歩によって、驚くほど高感度でもノイズの少ない撮影が可能になってきました。
ISO感度のオート設定もより使いやすくなりました。先程も説明しましたが、以下の設定がほとんどの機種でできるようになったのはありがたいです。
- ISOオートの範囲⇒文字通り上限値と下限値の設定が可能
- シャッタースピード低速限界⇒シャッタースピードを確保する設定
都度設定するのも良いですが、オート機能が便利で使いやすいので、普段はISOオートで良いと思います。
あえてマイナス露出で撮影する事でシャッタースピードを確保する
非常に暗い状況でシャッタースピードを確保したい場合に私が対応している方法です。レンズはできるだけF値が明るいものを使用し、絞り開放に設定。ISO感度も自分の許容範囲上限に設定。
この場合でもシャッタースピードが得られず、ブレてしまう懸念がある場合。そんな時は撮影後に編集で明るさを調整する前提で、マイナス補正で撮影する場合もあります。
マイナス補正すればシャッタースピードを上げる事ができますので。ちょっと裏技的で邪道と思われるかもしれませんが、結構緊急時は使えますよ。編集前提なので、画質はRAWが絶対条件と考えています。
まとめ ― 露出をコントロールして明るさを制する
露出の調整と聞くと何だか難しく聞こえますが、要は写真の明るさをどの程度に設定するかなんですね。
設定にもよりますが、基本的にカメラは画面内の明るさを側光し、平均的な明るさになるように露出を自動調整します。ですので、画面内に極端に明るかったり暗かったりする場所が存在している場合には、思うような明るさにならない事もたまにあります。
そういう時に、明確に重視するポイントの明るさを適切にするような補正が必要になります。こればっかりは撮影者が決定する必要がありますので、撮った写真を背面液晶で確認しながら調整すると良いです。デジタルって本当に便利ですね。