デジタル一眼レフカメラの重要な設定項目であるISO感度。最近ではセンサーや画像処理エンジンの性能向上によって、かなりの高感度撮影が可能になり、活用することでのメリットが非常に大きいです。
目次
ISO感度とは
ISO感度ってカメラにあまり詳しくない人にとっては耳慣れない言葉だと思います。デジタルカメラでは、レンズを通して撮像素子というセンサーによって映像を取り込みます。
センサーには細かい画素というものがあり、その1つ1つが光に反応して写真が撮影できる訳です。
この画素はセンサー内に無数に存在し、現在では2,000万画素クラスでも普通になってきています。この2,000万画素というのは、センサー内の画素数が2,000万個も存在しているという事です。よくわからないくらい膨大な量ですよね。
それ程膨大な画素数による情報を取り込んで写真が出来ているからこそ、デジタルでも解像度の高い写真が撮影出来るわけです。
それで、そのそれぞれの画素には感度というものがあり、どれくらいの光で画素が反応するかを数値で表したものです。つまりこれがISO感度です。
デジタルの恩恵!フィルムカメラとの大きな違い
撮像素子というのは、フィルムカメラの場合にはフィルムそのものに相当します。
フィルムカメラでは、フィルム毎に感度が決まっており、例えば36枚撮りのフィルムでISO400といった具合に決まっています。
つまりそのフィルム36枚をすべて撮リ終えて別の感度のフィルムに変えない事には感度は変えられなかったわけです。
デジタル一眼レフは撮影の度に1枚1枚ISO感度を変える事が出来ますが、フィルムカメラの時代には考えられない事でした。
現在デジタルではそれが当たり前に出来るわけですが、これはデジタル化による大きなメリットの一つなんですよ。
ですのでフィルムの一眼レフカメラで写真を撮った事のある人なら、この便利さを理解できますので、活用されている方も多いでしょう。
しかしもはやそういう人は少数派だと思います。
最近は、初めて一眼レフカメラを購入するのがデジタルの一眼レフという方が殆どでしょう。
そういう方は、ISO感度を変える事によるメリット、デメリットを理解し、適切に撮影に活かす方法を身に付けましょう。それを撮影に有効活用する事で、撮影時の選択肢や対応できる範囲が広がります。
ISO感度を調整する事によるメリット・デメリット
例えば適性露出で撮影している状態から感度だけを上げると、露出が明るくなります。これを利用すると、少ない光でも一定の露出が得られる事になりますので、暗い状況でシャッタースピードを上げたい場合などに、ISO感度を上げて対応したりが可能なんです。
これはかなりのメリットですね。今までは暗すぎる事でブレて撮れなかったような場合でも、ブレずに撮れるようにもなりますから。
特に子供写真の撮影はブレとの戦いでもありますから、ISO感度を使いこなすのは非常に重要です。
ここで気付いた方も多いかも知れませんが、少ない光で撮影出来るのなら常に感度を上げて撮影すれば、同じ露出でもシャッタースピードを速められるんじゃないか、ということです。
しかし、感度を上げる事によるデメリットもあります。それはノイズの影響です。
感度を上げると少ない光でも撮影出来るのは既に説明しましたが、取り込みたい映像を検出しやすくなると同時に、取り込みたくないノイズも検出しやすくなってしまうんです。
感度を上げる行為は、取り込む信号を増幅する事になりますので、不要な信号であるノイズまでをも増幅してしまうんですね。
これは単純に比例で増えるわけではなく、カメラを開発する場合には、ISO感度を上げても極力ノイズは増えないように設計します。これにより、高感度撮影におけるノイズの発生が、新製品毎に改良されているわけです。
暗い場面で撮ると、ざらついた画像になるのはノイズの影響
暗い場面というのは、撮りたい信号(光)自体が少ないわけです。
先にも少し触れましたが、ISO感度を上げて信号を増幅すると、そのような撮りたい映像の信号が増幅されますが、同時に不要な信号であるノイズも一緒に増幅されてしまうという訳です。そういったノイズが写真をざらつかせる原因となります。
表現の幅が広がる
高感度でもノイズが許容できる範囲であれば、暗い状況でもISO感度を上げる事でシャッタースピードを確保出来ます。
場合によってはストロボを使わざるを得ないようなシーンでも、ストロボ無しでより自然な、その場の雰囲気を壊さない写真が撮れるようにもなります。
また、ある程度の範囲にピントを合わせたいが為に、絞りを開けたくない場合もあります。例えば子供数人で遊んでいて、全員にピントを合わせたい場合で暗くてシャッタースピードが確保できないような場合ですね。
そういう時も、絞りはそのままでも、ISO感度を上げることでシャッタースピードを上げることが出来ますので、全面的にピントを合わせつつも速いシャッターがきれるわけです。
このように、ISO感度は絞りとシャッタースピードと同じくらい重要なパラメーターであり、相互に影響し合うので、適切にコントロール出来るようになれば色んな場面で対応できる範囲が広がり、表現の自由度さえも拡大出来ます。
露出一定でISO感度を変えてシャッタースピードを調整する場合
ISO感度とシャッタースピードは非常に分かりやすい関係にあります。仮にAという設定からISO感度を倍にし、シャッタースピードを調整してAの設定と同じ露出(設定B)にする場合は、シャッタースピードはAの時の半分にするだけです。
例を挙げて説明すると、
- ISO感度 ⇒ 400
- シャッタースピード ⇒ 1/120
この状況でISO感度を2倍にし、同じ露出にする為にシャッタースピードを調整するなら、
- ISO感度 ⇒ 800(400×2)
- シャッタースピード ⇒ 1/240(1/120/2)
となります。設定AとBはどちらも同じ露出(明るさ)の写真ですが、設定Bの方が速いシャッターがきれる事になり、よりブレにくくできる訳です。しかし、設定Bの方が感度が高いためにノイズはAより多く、画質は設定Aの方が良いです。
露出一定でISO感度えを変えて絞りを調整する場合
絞りの変化は数値的には少し分かりにくいです。√2倍で変化していくからです。若干でも分かりやすいように、おおよそ1.4倍、又は1/1.4で考えると多少は分かりやすいです。慣れると数値的になんとなく分かってくるんですけどね。
今度は仮にCという設定からISO感度を倍にし、絞りを調整して設定Cと同じ露出(設定D)にする場合は、絞りは1.4倍にしないといけません。
- ISO感度 ⇒ 400
- 絞り ⇒ F4
この状況でISO感度を2倍にし、同じ露出にする為に絞りを調整するなら、
- ISO感度 ⇒ 800(400×2)
- 絞り ⇒ F5.6(4×1.4)
となります。設定CとDも、先ほどのシャッタースピードの例と同じように、露出は同じです。しかし、設定Dの方が広い範囲にピントが合います。画質は設定Cの方が良いですね。
ISO感度の許容範囲を自分の中で決めておく
ノイズに関しては、ある程度までは上げても殆んど見た目は分かりません。
例えば、私の場合はフルサイズのEOS5DMarkⅢを普段使っていますが、過酷な状況であれば、ISO12,800まで高感度にして撮影する場合もあります。暗い室内で子供を撮る場合は、ほぼこの上限まで上げてシャッタースピードを確保していますね。
このように、自分の中でどのくらい迄ならISO感度を上げられるという基準を設けておくと良いです。
それで状況に応じて、速いシャッターをきりたい時は、場合によっては自分の許容範囲上限までISO感度を上げ、ブレを最小限にするのが良いでしょう。そうすることで失敗写真を減らせますよ。
まとめ ― ISO感度を使いこなして失敗写真を減らし表現の幅を広げよう
ISO感度はデジタルカメラでは特に重要なパラメーターです。一眼レフカメラの設定で、絞りやシャッタースピードとも相互に影響しますので、それぞれをコントロールする場合にも適切な設定が必要です。
ISO感度の設定をマスターすれば、今までは撮れなかったような暗いシーンでもブレずに撮ることが出来ますし、表現の自由度は大幅に広がります。
なかなか取っ付きにくいかも知れませんが、感覚的に慣れるまでは、常にISO感度を意識するくらい気にして撮影し、撮った写真を確認する際にもその影響を把握するよう努めましょう。
慣れれば撮影時に瞬時に適切な対応が出来るようになりますよ。